vol.003 自宅で介護をするということ
親や、兄弟、配偶者がいよいよ介護が必要になってきた。
その時、まず選択肢は2つ。
1.自宅で介護ををする
2.老人ホームで介護をしてもらう
この時点では1の自宅介護が圧倒的に多い。
自宅で介護をすることを国は推奨するし、
ケアマネや地域包括支援センターも先ずは
自宅で介護してもらうのを前提に話す。
余程、固い意志で要介護化=老人ホームと決めていない限り、いきなり老人ホームと思う人も少ない。
しかし、今までに講師をさせていただいた時など元気な高齢者の話を聞くと、「子どもや家族に迷惑はかけたくない。」中には「もし私がボケたり歩けなくなったりした時のために今から老人ホーム探しているの」という方も実に多い。
一方でいざ介護を受ける立場になってみて、いきなり老人ホームというのはやはり時期尚早なのだろう。自宅生活を選ばれる方はとても多い。
特に妻からの介護、娘さんやとても関係性の良いお嫁さんが同居または近居にある方は、比較的ストレスがなく過ごせるようだ。
一方で、夫、息子が主たる介護を行う者になると問題も少なくない。
多くのケースで見られるのは、プライドの高さや社交性が女性より低いことが原因なのかアドバイザーに当たるケアマネや関わる各事業の担当者の意見に耳を貸さずに「こうするべき」といった自分の考えを押し通すことが多い。
そのこうするべきが、良い方向に作用していりうちは良いが、それが少し又は大幅にズレていることも少なくない。
介護を受けるのがかなり苦痛そうな方も何名も見てきたし、そういった独り相撲な介護をしている側もかなりストレスがあったように思う。
比較的人の意見を聞ける男性でも、やはり介護鬱などは大なり小なり見受けられる。
自宅で介護をする際には、訪問介護やデイサービスと言った様々なサービスを受けられるが、とは言ってもほとんどのケースでは自宅で介護をする時間の方が長い。
それも昼夜問わず、いつ何があるか分からない。
仕事中に親が家で転んで救急搬送されたから早く病院に来て欲しいとTELが鳴ることもあるだろう。
夜中トイレに行きたいと起こされることもあるだろう。
意思疎通がままならない認知症の方であれば、壁紙を剥がしたり、徘徊して警察沙汰になったり、それこそボヤ騒ぎ、車やら自転車での事故など挙げればキリがない。
介護者はそういった不安が付き纏うことになる。
そうした不安やストレスを抱え込むことは決していけないことである。
最終的に決めるのは本人または家族だが、専門家には心を開いて相談し、時には不本意な意見が出ても、先ずは受け入れる勇気も必要だ。
また、介護をする環境作りとして、
福祉用具の検討、家具の配置換え、自宅や車のバリアフリー化、バラバラに住む家族の交代での介護などもぜひお勧めしたい。
誰のための介護なのか。
忘れてはならないのはそこだ。
妻への介護なら、妻だったらどういう介護、生活、サポートを望むだろうか。
先ずはそれに沿って考える方が少なくとも本人のQOL(生活の質)は遙かに高いのではないか。
今までに親や妻に迷惑掛けっぱなしだったから介護に身を捧ぐことで罪滅ぼしをしたい。そんな考えは絶対に捨てるべきである。
そして、最近問題になっている介護離職の増加。これはとても深刻である。
介護のために無職となり、ブランクができ今より年齢を重ねた時、どれほどの職があるか。
今は行政や民間企業の福利厚生でも介護をサポートする制度はたくさんあるし、中には介護離職を防止する事を事業とする企業もある。
介護をする側は、職があろうがなかろうが、自分の家庭があろうがなかろうが、自分の生活は極力変えずにどう適切な本人のための介護をするか、そこを大事にしてほしい。
また、これはなかなか難しいのだが、もし、介護を受ける側の方がこの記事を読まれていたとしたら、これだけは忘れないでほしい。
自宅で家族や親族から介護を受けられているのは本当に幸せなこと。家族が主体となって色んな専門家と見えないところで相談して色々考えていることを。
介護が必要になったからって家族から介護を受けられることは決して当たり前ではないのである。
最初は感謝していても毎日それが続けば当たり前にもなってきてしまうし、時には意にそぐわない介護のされかたもあるだろう。
声を荒げてしまう時もあるだろう。
それでも自分のために尽くしてくれている家族とそれをサポートしている専門家への感謝を忘れなければどんなに大変な介護度になっても愛され婆さんや好々爺でい続けられるのだ。