vol.004 老人ホームと施設

私の介護におけるキャリアの中では施設介護の方が長い。

なので施設介護にはやや辛口なことはご了承願いたい。

 

自宅で介護できない、もう限界だ、したくない、そんな時に出てくる選択肢がいわゆる老人ホームである。

 

日本においては老人ホームを大きく二分することができる。

それは「施設」と「老人ホーム」である。

 

制度的な話をすれば

施設とは

特別養護老人ホーム(老人福祉施設)と

介護老人保健施設を指す。

民間が運営する有料老人ホームやグループホームは厳密には介護保険施設とは言わない。

前者は全て行政や法律が定めた通りに行う介護である。

金太郎雨のように数ある特養もどこを切っても基本的には同じサービスで同じような人員体制である。

 

対して民間などが運営する後者は価格設定も人員体制も入居条件もまちまちだ。一定のルール以外は事業者のコンセプトによるのである。

介護に困っている人を少しでもリーズナブルに引き受けられる老人ホーム

高い代わりに贅の限りを尽くした老人ホーム

元気な方または重度者に特化した老人ホーム

など様々である。

 

しかし、私の考えではもう一つ施設と老人ホームとに分ける軸が存在する。

 

それは

画一的。効率重視。入居者の個性が尊重されない。施設都合。住環境として好ましくない。介護を目的に入所。

こういう所は施設である。

総じて施設はマンパワーが圧倒的に不足していて慢性的な人員不足から抜け出せない。

そして大抵は特養や低価格有料老人ホームの一部がこれにあたることが多い。

(その理由は次回、vol.005で述べたい)

 

逆に、入居者の個性やキャラクターを尊重し、極力それに沿った対応をする。住環境として魅力的で、介護を伴う生活を目的に入居するのが老人ホームである。

高価格帯を中心とした有料老人ホームや、一部の経営状況の良い特養に見られやすい。

 

そしてこう申し上げるとほぼ決まって言われることがある。

「高い施設を売りたいんだろう、皆が金持ちではない」と。

言わんとしていることは重々分かる。

 

マンパワーが圧倒的に足りない施設が多い中では絵に描いた餅かもしれない。しかし、それは事業者や職員の都合であって入居者や家族は知ったことではない。

人が足りないからって人権や高齢者個人が軽視されていいわけではない。

 

そして今は高級とまでいかなくても、現実的なある程度の貯蓄と年金で入居できる素晴らしいホームも少なくない。

 

建物がボロくても職員の志が高い老人ホームも多々ある。

高級なホームとそうでないホームの違いは次のような違いがある

・職員が豊富にいる(制度上の配置義務以上)

・館内が広い、ゴージャス、共用部が多い、広い

・病院や駅への送迎がある

・駅近、都心近く、人気住宅地

・医療ケアやリハビリの付帯サービスも充実

などである。

 

先に述べた、現実的なある程度の貯蓄と年金で入居できる素晴らしいホームとは、職員が豊富にいる事に重きを置き、他へのこだわりを手放す事で出会えるだろう。

 

勿論スタッフが多いだけではダメで、正規雇用のスタッフが多く、営繕要員も多く、マネジメントがしっかりしていることも前提として付け加えたい。

多少スタッフが手厚くても郊外で駅から遠く、建物や設備にあれこれ注文しなければ、素晴らしい老人ホームは選べるのである。

 

少なくとも介護施設はどこも同じ。

同じなら安くて近い方がいいとは思わない事である。

もし親が認知症で時間や居場所、この顔さえも分からなくなっても同じである。

職員が足りない事を盾に介護や人権を軽視する施設なんかに入ってしまったら車いすやベッドに押さえつけられてしまう。

そうなったら入院していることと変わりなく日ごと物凄い速さで認知症は加速し、足腰は効かなくなっていってしまう。

意思疎通のできない寝たきり老人の簡単レシピである。

 

施設ではなく、自分たちに合った素晴らしい老人ホームを見つけていく具体的な方法は今後述べていきたい。